統計コンサルの議事メモ

統計や機械学習の話題を中心に、思うがままに

人工知能って何ですか

今日、ニュースを見ていたらこんな記事がありました。

人工知能が株式市場で存在感、学識者驚く的中率68%-将来8割可能も - Bloomberg

株式の将来予測に人工知能を用いることで上昇/下降を精度よく的中させることが可能であるとのことです。私は投資家ではないので的中率68%というのがどれほど凄いことであるかはわかりませんが、どうやらかなりのパフォーマンスであるとのこと。羨ましいですね。



とは言え、この方が書かれた論文を見てみると、それほど複雑なことはしていないようです。
http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-013-03&openfile=SIG-FIN-013-03.pdf

内容を確認してみると

の4つのアルゴリズムを使用して株価(銀行株)の1月後の増減を予測するモデルを構築した結果、Random Forestが最も良かったというものでした。ここまでは一般的なモデル構築の流れとまったく同じで、この記事で紹介されている方法の特徴としては変数の選択などを自動で行い、最適なものを常に選択できるようにしたという点に尽きるでしょう。アイディア自体は目新しいものではありませんが、それを精度よく、かつ十分な実用性(分析にかかる時間とか)を保って実現したことに価値があるように思います。


で、これって「人工知能」なんですかね?
このタイトルにはどうしても違和感があります。果たしてこのアルゴリズムは「知性」を獲得したと言えるでしょうか?*1


「アヒルウサギ」という有名な絵(だまし絵)があります。これは見方によってアヒルにもウサギにも見えますが、当然、同じ絵です。つまり全く同じデータから、異なるラベルが付けられることになります。
しかしこの絵をアヒルとして見ている時にはウサギとしての特徴は脳の中では「見えないもの」として処理されており、一方ウサギとして見ている時には逆の現象が起きていることになります。きっと特定のパターンに反応するニューロンというものがあって、そのOn/Offが組み合わさって「これはアヒルだ」とかを判定しているのでしょう。

何が言いたいかというと、データから特定のパターンを抽出するだけでは「人工知能」としては不十分じゃないか、ということです。知性を獲得する仕組みや、経験によって認識精度が向上する仕組みなど、人間が学習する仕組みを取り入れてこその「人工知能」ではないでしょうか。


長くなりましたが、思うままに書いてみました。

*1:こういうことを言うと必ず「じゃあ『知性』って何?」という話になり、そしてそれに対する答えを持ち合わせてはいないのですが