Microsoft R Clientによる大規模データの分析
Revolution Analyticsを買収したMicrosoftが、Revolution R Openに代わりMicrosoft R OpenというRのラッパーのようなものを出している。それに更に大規模データ分析用の独自開発パッケージを追加したMicrosoft R Client(MRC)というツールがあり、MRCの独自パッケージ{MicrosoftML}に実装されているrxGLMを用いて簡単な動作テストを実行したのでその結果を記しておく。MRCのインストールについてはこちらを参照:
まずは大規模データを読み込むために{readr}パッケージをインストール。なお今回はAWSに新しく立てたWindows Serverを使うので、{tidyverse}を使って必要そうなパッケージをまとめてインストールすることにする。
install.packages("tidyverse")
続いてライブラリの読み込みと作業ディレクトリの変更を行う。
library(readr) library(MicrosoftML) library(RevoScaleR) library(lattice) wk_dir <-"C:/Users/Administrator/Desktop/MicrosoftML" setwd(wk_dir)
データを読み込む。{MicrosoftML}がハイパフォーマンスやスケーラブルを謳っているので、そこそこの大規模データ(500万行×18列、2GB程度)を使用してみた。サンプルデータはこちらから取得した。
UCI Machine Learning Repository
### 大規模データの読み込みにreadr::read_csvを使用 ### ヘッダーがないのでcol_namesはFALSEにする datTmp <- read_csv("Data/SUSY.csv", col_names = FALSE) ### X1が目的変数、X2〜X5を説明変数として使用した ### 全カラムを使用した時の結果は後日 ### まずは結果の比較用にglmを実行。まぁ、動かないだろうと予想 start_time <- Sys.time() res_GLM <- glm(X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5, family = binomial("logit"), data = datTmp) end_time <- Sys.time() print(end_time - start_time) # 予想通りメモリの割り当てに失敗した旨のエラーメッセージを受け取る。。。 ### MicrosoftMLではどうか。rxGLMが{MicrosoftML}におけるGLMに相当する関数。 start_time <- Sys.time() res_rxGLM <- rxGlm(X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5, family = binomial("logit"), data = datTmp) end_time <- Sys.time()
> print(end_time - start_time) Time difference of 9.806952 secs
なんと、500万行のデータのglmが10秒足らずで実行できた。なおWindowsインスタンスはAWSでのt2.medium(64bit、RAM4GB)を使用しており、特別スペックが良いという訳ではない。
このままではglmとの比較ができないので、もう少しデータを減らして再挑戦してみる。
### gcを使ってメモリを解放しておく gc() gc() ### 使用データを100万行にする datTmp_1MM <- datTmp[1:1000000, ] ### 再実行 start_time <- Sys.time() res_rxGLM_02 <- rxGlm(X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5, family = binomial("logit"), data = datTmp_1MM) end_time <- Sys.time() print(end_time - start_time) # Time difference of 1.839989 secs gc() gc() start_time <- Sys.time() res_GLM_02 <- glm(X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5, family = binomial("logit"), data = datTmp_1MM) end_time <- Sys.time() >print(end_time - start_time) # Time difference of 7.471947 secs
今度はglmでも10秒かからず実行できた。
そこで両者の結果が一致するかを確認する。
coef(res_GLM_02) (Intercept) X2 X3 X4 X5 -1.7128408655 2.6384939818 0.0002822391 -0.0012571389 -0.9573449310 coef(res_rxGLM_02) (Intercept) X2 X3 X4 X5 -1.7128408655 2.6384939818 0.0002822391 -0.0012571389 -0.9573449310
回帰係数は両者で一致しており、問題なさそうだ。
続いてsummaryを実行する。
### まずはrxGLM > summary(res_rxGLM_02) Call: rxGlm(formula = X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5, data = datTmp_1MM, family = binomial("logit")) Generalized Linear Model Results for: X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5 Data: datTmp_1MM Dependent variable(s): X1 Total independent variables: 5 Number of valid observations: 1e+06 Number of missing observations: 0 Family-link: binomial-logit Residual deviance: 1160233.9234 (on 999995 degrees of freedom) Coefficients: Estimate Std. Error z value Pr(>|z|) (Intercept) -1.7128409 0.0052066 -328.976 2.22e-16 *** X2 2.6384940 0.0079644 331.285 2.22e-16 *** X3 0.0002822 0.0022039 0.128 0.898 X4 -0.0012571 0.0022356 -0.562 0.574 X5 -0.9573449 0.0062846 -152.332 2.22e-16 *** --- Signif. codes: 0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 (Dispersion parameter for binomial family taken to be 1) Condition number of final variance-covariance matrix: 7.0668 Number of iterations: 6 ### 続いてglm > summary(res_GLM_02) Call: glm(formula = X1 ~ X2 + X3 + X4 + X5, family = binomial("logit"), data = datTmp_1MM) Deviance Residuals: Min 1Q Median 3Q Max -8.4904 -0.8894 -0.7140 1.0654 3.0185 Coefficients: Estimate Std. Error z value Pr(>|z|) (Intercept) -1.7128409 0.0052066 -328.977 <2e-16 *** X2 2.6384940 0.0079644 331.287 <2e-16 *** X3 0.0002822 0.0022039 0.128 0.898 X4 -0.0012571 0.0022356 -0.562 0.574 X5 -0.9573449 0.0062846 -152.333 <2e-16 *** --- Signif. codes: 0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1 (Dispersion parameter for binomial family taken to be 1) Null deviance: 1379205 on 999999 degrees of freedom Residual deviance: 1160234 on 999995 degrees of freedom AIC: 1160244 Number of Fisher Scoring iterations: 5
summaryの結果も両者で大きく異なる様子はない。rxGLMの方でもう少し情報を追加したぐらいか。
一旦動作テストは以上である。{MicrosoftML}は少なくともオリジナルのRのglmと比較して大規模データに強いというのは間違いなさそうで、Rの弱点をカバーできる作りになっているようだ。従来MicrosoftはSQL ServerとRを連携させることで大規模データへの対応を行ってきたイメージがあったが、R単体(と言えないかもしれないが)でこれぐらいの規模のデータを処理できるのであれば、ウェブログを触るような状況とならない限りR一本で大抵の処理はできるように思う。RユーザーとしてはMRCを含めて近年のMicrosoftのRへの貢献はかなり大きいと感じている。
また今回の記事では割愛したが、{MicrosoftML}ではrxGLM以外にも様々な関数が用意されており、特に二項分類のための”Fast Tree"と呼ばれるアルゴリズムを実装した関数はかなり強力な感触を受けた。こちらの検証結果も後日書いてみようと思う。
人工知能と機械学習とDeep Learning
「人工知能(AI)による業務改革!」「Deep Learningを搭載した○○!」みたいな記事は巷に溢れかえっているが、そういった記事を見るにつけ思うのが「人工知能と機械学習、Deep Learningなどのアルゴリズムの区別ってどうなっているんだろう?」ということである。自分で機械学習のアルゴリズムを触ったことがあればわかるかと思うのだが、現在世間で言われているところの「人工知能」とは、「自律的な思考を行う」だとか「知性を獲得した」だとかそういったものでは全くなく、Deep Learningもそのための特殊なアルゴリズムというわけではない。
この辺りの関係性をもう少しスッキリと説明できないかなーと考えていたところ、以下の記事を発見した:
またDeep Learningの大家であるモントリオール大学のBengioも同様に整理している:
http://www.deeplearningbook.org/contents/intro.html
私の人工知能に対する認識も上記と同じで(権威に阿ることにする)、Deep Learningは機械学習の中の1アルゴリズム(いわゆる「弱いAI」)として理解している。そのためDeep Learningを指して「人工知能」と称することにはかなりの抵抗がある。もしそれが成り立つなら、同じく機械学習の1アルゴリズムである(例えば)Random Forestを指して「人工知能」と呼んだって良いわけで、それならば決定木だってアリということになるだろうし、さらには線形回帰だって機械学習の1アルゴリズムとして捉えれば「人工知能」となってしまうだろう(もしかしたら実際に線形回帰程度のものを人工知能と謳っているところがあるかもしれない)。
「人工知能による〜〜」という言葉に惑わされず、内容を吟味した上で評価することを心がけたい。
RでTensorFlow
知らない間にRでTensorFlowが使えるようになっていたので触ってみました。それにしてもRStudioは相変わらずイイ仕事をしますね。
まずは以下の通り、RStudioのGitHubからTensorFlowのライブラリをインストールします。なおこのライブラリはあくまでPCに事前にインストールされたTensorFlowをRから呼び出すためのものなので、TensorFlow自体は別途インストールする必要があります。
## TensorFlowのライブラリをインストールする devtools::install_github("rstudio/tensorflow") ## ライブラリの読み込み ## データ加工用にdplyrとcaret、分析結果の比較用にglmnetとrandom forestのライブラリも読み込む library(tensorflow) library(dplyr) library(caret) library(glmnet) library(ranger)
無事にインストールが完了したら、一旦TensorFlowのバージョンを確認しておきましょう。ちなみに私の環境は0.11です。
## TensorFlowのバージョン確認 tf$VERSION [1] "0.11.0rc0"
では早速、TensorFlowによる「Hello,World!」です。この辺りは普通にマニュアルにある通りです。
## hello, tensorflow sess <- tf$Session() hello <- tf$constant("Hello, TensorFlow!") sess$run(hello) [1] "Hello, TensorFlow!"
単回帰の実行
続いてTensorFlowによる単回帰を実行してみます。この書き方を理解できれば重回帰への拡張は容易でしょう。
## seedを固定しておく set.seed(123) ## データ作成。回帰のパラメータは切片が-12、傾きが1.5(適当です) x_data <- runif(100, min=0, max=1) y_data <- x_data * 1.5 - 12 ## TensorFlowによる変数の宣言 W <- tf$Variable(tf$random_uniform(shape(1L), -1.0, 1.0)) b <- tf$Variable(tf$zeros(shape(1L))) y <- W * x_data + b ## 損失関数の定義と最適化のパラメータ設定 loss <- tf$reduce_mean((y-y_data)^2) opt <- tf$train$GradientDescentOptimizer(0.2) train <- opt$minimize(loss)
上記で分析環境が整ったので以下の通り実行しますが、その際の注意点として、TensorFlowのバージョンによって初期化に用いる関数が異なることに気をつけましょう。私の環境(0.11)では初期化の関数は「initialize_all_variables()」なのですが、新しいバージョン(0.12)では「global_variables_initializer()」が用いられるようです。
sess <- tf$Session() ## 変数の初期化。TensorFlowのバージョンによって、初期化に用いる関数が異なる。 # sess$run(tf$global_variables_initializer()) sess$run(tf$initialize_all_variables()) ## 学習の実行 for (step in 1:1000){ sess$run(train) if (step %% 20 == 0) { cat(step, "-", sess$run(W), sess$run(b), "\n") } } 20 - -2.501043 -9.869881 40 - -0.8908119 -10.72716 60 - 0.0713779 -11.23942 80 - 0.646331 -11.54552 100 - 0.9898927 -11.72843 : 920 - 1.499992 -12 940 - 1.499992 -12 960 - 1.499992 -12 980 - 1.499992 -12 1000 - 1.499992 -12
LearningRateは小さめに設定してありますが、ちゃんと収束しているようですね。
多項分類
続けてIrisのデータを用いてSpeciesの分類を行います。
## Irisデータの多項分類 W <- tf$Variable(tf$zeros(shape(4L, 3L))) x <- tf$placeholder(tf$float32, shape(NULL, 4L)) b <- tf$Variable(tf$zeros(3L)) y <- tf$nn$softmax(tf$matmul(x, W)+b) y_ <- tf$placeholder(tf$float32, shape(NULL, 3L)) ## 損失関数の定義 loss <- tf$reduce_mean(-tf$reduce_sum(y_*y, reduction_indices = 1L)) opt <- tf$train$GradientDescentOptimizer(0.9) train <- opt$minimize(loss) ## 分析用データ(Iris) trn_x <- iris %>% select(-Species) %>% as.matrix() trn_y <- iris %>% dummyVars(formula = ~ Species, sep = NULL) %>% predict(object = ., newdata = iris) %>% as.matrix() sess <- tf$Session() sess$run(tf$initialize_all_variables()) ## 学習の実行 N <- 20000 each <- 1000 resAll <- matrix(NA, N, 15) for (i in 1:N){ sess$run(train, dict(x=trn_x, y_=trn_y)) resAll[i, ] <- c(sess$run(W), sess$run(b)) if (i %% each == 0) { cat(i, "-", sess$run(W), sess$run(b), "\n") print(table( predict = sess$run(fetches = y, feed_dict = dict(x = trn_x, y_ = trn_y)) %>% apply(margen=1, FUN=which.max), true = trn_y %>% apply(margen=1, FUN=which.max))) } } 1000 - 1.820591 3.826579 -5.199587 -2.53192 1.656648 0.04738447 -0.9168726 -2.692287 -3.47724 -3.873963 6.116461 5.224204 0.8330443 1.588295 -2.421341 true predict 1 2 3 1 50 0 0 2 0 46 0 3 0 4 50 2000 - 2.170959 4.40071 -6.013396 -2.967016 1.705534 0.348204 -1.100592 -3.198786 -3.876493 -4.748915 7.113993 6.165799 0.9800377 2.52502 -3.505058 true predict 1 2 3 1 50 0 0 2 0 47 0 3 0 3 50 : 19000 - 4.02061 6.796506 -9.696184 -4.990173 2.587524 0.9785848 -2.744421 -5.431025 -6.608002 -7.775012 12.4406 10.42116 1.755378 8.18106 -9.936396 true predict 1 2 3 1 50 0 0 2 0 47 0 3 0 3 50 20000 - 4.081785 6.860996 -9.807202 -5.050861 2.61721 0.9981934 -2.800498 -5.49942 -6.698854 -7.859092 12.60772 10.55024 1.781228 8.357506 -10.13868 true predict 1 2 3 1 50 0 0 2 0 47 0 3 0 3 50
20,000回ほど回してみたのですが、意外と分類が難しいのかパラメータは収束していません。また分類精度も最初の方で現在のレベルまで到達して以降、全く改善はありませんでした。この辺りはLearningRateや初期値の設定などに依存するのかもしれません。
最後に、以上の結果を他の分類器と比較してみます。比較対象にはglmnetとrandom forestを用いました。
## glmnetによる結果と比較してみる resGLM <- glmnet(trn_x, iris$Species, "multinomial") table(predict = predict(resGLM, newx = trn_x, type = "class", s = 0.01)[, 1], true = iris$Species) true predict setosa versicolor virginica setosa 50 0 0 versicolor 0 47 1 virginica 0 3 49 ## random forestによる結果と比較してみる resRF <- ranger(Species ~., data=iris, mtry=2, num.trees = 500, write.forest=TRUE) table(predict = predict(resRF, data=iris)$predictions, true=iris$Species) true predict setosa versicolor virginica setosa 50 0 0 versicolor 0 50 0 virginica 0 0 50
random forestは流石の精度ですね。Irisは分類が容易なデータなので、TensorFlow、glmnetもそれなりの精度で分類できています。
雑感
以上、RによるTensorFlowの流れを追ってみたのですが、正直に言えば「コレジャナイ」感が強いなーというのが私の感想です。一番引っ掛かりを感じる部分が「事前にTensorFlowのインストールが必要なこと」で、Rをメインに使用しているユーザーからはPythonの環境整備に対するハードルが高そうだなと思いました。他のライブラリのようにTensorFlow自体もinstall.packages()でインストールできると良いな、と。
もう一つ、これはPython用のTensorFlowをRから呼び出しているためなのでしょうが、書き方がRっぽくないなーと感じました。特に「tf$Session()」の部分などいかにもPythonっぽくてちょっと取っつきにくいなぁと思ってしまいます。
もちろんこれは私がそのように感じるというだけですので、Pythonにも馴染みのある方なら全く問題とはならないでしょう。ただ、私としてはmxnetの方が良さそうだなと思いましたので、もう少し検討を続けようと思います。
optimってあんまり信用できないなぁ、って話
タイトルの通りです。
仕事で使うことがあったのでRのoptimを使って回帰を解いてみたのですが、これが意外に安定しません。変数の数なのか、ダミー変数が含まれるとダメなのか、原因についてはよくわかりませんが想定以上に解がバラついてしまいました。
実行したコードは以下の通りです。まずは以下のようにデータとoptimに渡す目的関数を定義します:
## サンプルデータとしてirisを使用 dat <- iris datMdl <- as.data.frame(model.matrix(~.-1, data = dat)) ## Speciesを含まないデータ dat01 <- datMdl[, 1:4] ## Speceisを含むデータ(virginicaを除外) dat02 <- datMdl[, -7] ## 最小二乗法を以下のように定義 myLM <- function(b, dat) { Y <- as.matrix(dat[, 1]) X <- as.matrix(cbind(1, dat[, -1])) b <- as.matrix(b) prd <- X %*% b e <- Y - prd return(t(e) %*% e) }
以上の条件で、まずはSpeciesを含まないデータを用いてlmとoptimをそれぞれ実行します。
## Speciesを含まないデータでSepal.Lengthをyとして回帰をかける resLM_01 <- lm(Sepal.Length ~ Sepal.Width + Petal.Length + Petal.Width, data=dat01) ## optimによる回帰係数の取得 init_coef <- rep(1, 4) resOpt_01 <- optim(par=init_coef, fn=myLM, dat=dat01[, 1:4]) ## 係数の確認。だいたい同じ cbind( summary(resLM_01)$coef[, 1], resOpt_01$par) [,1] [,2] (Intercept) 1.8559975 1.8589403 Sepal.Width 0.6508372 0.6501880 Petal.Length 0.7091320 0.7087105 Petal.Width -0.5564827 -0.5559860
コメントでも書いてありますが、係数は概ね一致します。続けてSpeciesを含めたデータによりlmおよびoptimをそれぞれ再度実行します。
## 次にSpeciesを含むデータで同様に回帰を実行 resLM_02 <- lm(Sepal.Length ~ Sepal.Width + Petal.Length + Petal.Width + Speciessetosa + Speciesversicolor, data=dat02) ## 同じく、optimによる回帰係数の取得 init_coef <- rep(1, 6) resOpt_02 <- optim(par=init_coef, fn=myLM, dat=dat02) ## 係数の確認。結構違う cbind( summary(resLM_02)$coef[, 1], resOpt_02$par) [,1] [,2] (Intercept) 1.1477685 0.6123026 Sepal.Width 0.4958889 0.4621860 Petal.Length 0.8292439 0.8993939 Petal.Width -0.3151552 -0.1967130 Speciessetosa 1.0234978 1.5512063 Speciesversicolor 0.2999359 0.4695160
Rの最適化ソルバーはoptim以外にもありますし(optimizeとか)、optimを使うにしてもパラメータや用いるアルゴリズム(Nelder-Mead、BFGSとか)など設定できる箇所は色々とあります。なのでこの結果だけを元にoptimを信用できないとは言えないのですが、このくらいのデータ・モデルでこれほどlmとの差が出てしまうと複雑な問題への適用はちょっとためらってしまいますね。
なお当初の目的としてはMarketing Mix Modelによる広告効果の推定を行う際に、残存効果の減衰率をoptimで推定してみようというものでした。optimの結果があまり芳しくないためこういった検証を行っていたのですが、この辺はいずれ記事にまとめようと思います。それからoptimはオプションでHessian(ヘッセ行列)を出力することにより標準誤差を計算できますので、その辺もいずれ書いてみようと思います。
リッジ回帰の解の特性
SAPのソリューションに「InfiniteInsight」というものがある。旧KXENをSAPが買収したもので、搭載されているアルゴリズムはサポートベクターマシンの開発者(VapniK)によるものらしく、統計解析に対する知識や経験なしに高精度のモデルを作成することができるらしい。
さて、このInfiniteInsightでは「分類・回帰」に類するものに対する分析では「リッジ回帰」が適用されるという話を耳にした。事の真偽はさておき、この「リッジ回帰」に思うことを述べてみる。
まずリッジ回帰とは何かと問われると、「L2ノルムの二乗を正則化項(ペナルティ)として与える罰則付き最小二乗法」である。いわゆる縮小推定法の一種で、学習データへの過適合を防止するために用いられたりするのだが、これはデータに対して過適合を生じたり多重共線性が問題となるような状況では一般にパラメータの絶対値が大きくなりやすいため、パラメータスペースに制約を設けることが可能なためである(ちなみにL1ノルムを罰則として与える方法をLasso回帰と呼ぶ)。
ここで思うのだが、リッジ回帰(Lassoも)を適用しようと考えている人は「汎化誤差を小さくする可能性が高まる代償として、不偏性や有効性を失っている」ことにまで考えが及んでいるのだろうか?
誤差が正規分布にしたがう変数に対して最小二乗法により解を推定した場合、この解はBLUEとなり、不偏性や有効性・一致性を備えることが知られているが、リッジ回帰ではそこに正則化項を加えることでパラメータが極端な値を取ることを防いでいる。もちろんこの解は不偏推定量ではないため、解の期待値が真の解と一致しないことを容認していると言える。そこまで踏まえ、それでもなおリッジ回帰を選択したというならば良いのだが、これまでに見てきたケースでは多くの場合、そこまで考えたものではなかった。交差検定による検証を行った結果、テストデータに対する予測性能が高くなることから「汎化性能が高い」→「良いモデル」という安直な考えによるものであったと思う。
近い話では、昨今の機械学習の流行に対しても似たような思いを持っている。Kaggleのようなデータ解析コンペでは様々なアルゴリズムを組み合わせた予測モデルを作ることがトレンドであるようだが、そのような方法で求められた解には一体どのような意味があるのだろう?
統計学における「モデル」という言葉の意味をもう一度よく考えてみたい。
できないと言ってはいけません
仕事をしていて思ったことを。
統計分析が求められる場面というものはいくつもあるが、その中で最もメジャーと言ってよいものの一つが「将来予測」だと思う。身近なもので言えば株価や天気で、「明日はどうなるか?」という問いについて、モデルは一つの答えを出してくれる。もちろん、その精度は検討した変数や手法によるところが大きいだろうが、単に勘や経験に頼ったものよりもよっぽど良い答えを出してくれるだろう。
そんな便利な統計モデルであるが、弱点もある。例えば、将来予測を行う際にはモデルに含まれる変数がすべて既知であらねばならない、というものだ。Rでpredict(newdata)を行うときや、SPSS Modelerで作成済みのモデルノードに新規データを渡す場面を想定してほしい。この時、新規データにはモデルに含まれる変数がすべて格納されている必要がある。
「何を今さらそんな…」と思われるかもしれない。しかし、データを触り、分析にかけ、予測を行うという行為の経験がなく、実際の作業としてはどのようなものであるかイメージができない場合には意外とこの辺りの感覚が抜け落ちている。つまり、一度分析を行ってしまえば無条件で新規のデータに対しても予測が可能であると思ってしまうらしい。
具体的な例を出そう。例えば携帯電話の顧客情報をもとにセグメンテーションしたいとする。顧客のデモグラ情報(年代や性別)の他、携帯電話の使用状況を変数として用いた結果、非常によいモデルができたとしよう。それではこのモデルを用いて、新規顧客がいずれのクラスターに分類されるかを判断できるだろうか?
答えはノーだ。なぜならば、新規顧客については携帯電話の使用状況に関するデータがなく、モデルを当てはめることができないからだ。クラスタリングでなく回帰モデルで例えれば、複数ある変数の内のいくつかがNULLになっている状況である。
それでは、このようなクラスタリングに意味はないのだろうか?
当然、そんなことはない。もし情報が足りなくてクラスタリングができないのであれば、どういった情報を取得すれば良いのか考えれば良い。あるいは取引が開始するまでの接触の段階で情報収集を重ね、少しずつクラスタリングの精度を向上させていくのも良い。最初は間違っていてもよいから、何らかのアクションが打てるように分析結果を活用する、というのがコンサルに求められる態度であり、データ分析者と異なるところなのだろう。
『「できない」という言葉は何の意味もないから、「どうすればできるか」を考えよう』
以前に上司から教えられた言葉である。データ分析者としてはすっきり納得がいくものではないが、コンサルとしては非常に大事な教えであったなぁと思う今日この頃。
Data Scientist Workbench
こんなサービスがあることを最近知った。
■Data Scientist Workbench
datascientistworkbench.com
IBMが提供しているサービスで、ブラウザ上でRStudioやJupyterが実行できる環境を提供してくれる(無料で!)。分析手法よりもHadoopやSparkなど大規模データの捌き方をメインにしている様子で、用意されているサンプルプログラムもRやPythonでのSparkの実行例などが多い。
Big Data Universityのオンラインコースへのリンクもあり、基礎的な学習とR/Pythonでの実装についてはここで十分に学べると思う。
Seahorseというツールは初めて見たけどAzure MLに似ている。このUIは個人的には使いにくいと思うんだけど、他の人はどうなんだろうか。。。
ちなみにBig Data Universityはこちら
Analytics, Big Data, and Data Science Courses - Big Data University